| ある日、十勝の風景を海から眺めたいと思った。
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| 釧路港から東京行きのフェリーで広尾港まで乗船すれば |
| 雌阿寒岳の噴煙が見えるという。 |
| 友人の話を聞いて乗船したフェリー「サブリナ」号には、人影が疎らであった。 |
| 襟裳岬から十勝平野へと続く陸地は、海に面して高い壁である。 |
| この壁がようやく穏やかになるところに、十勝開拓で入殖した晩成社の跡地がある。 |
開拓者が十勝への第一歩を記したのは、あの雲の下辺りだろうか。
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| 海からの眺めは、遠い日の記憶も、時代の喧騒も |
| すべて包み込むような静寂に満ちている。 |
| ・・・「サブリナ」号は風を斬って緩やかにすすむかに見えた。 |
| しかし船内の壁をよく見ると、釘がいたる所で浮いて飛び出していた。 |
| 内装の釘は荒波の太平洋航路を物語っていた。 |
| 豪華フェリー「サブリナ」号は、 |
| 当初設計された予定速度で運行出来なかったのだという。 |
| ・・・程なく十勝航路は廃止された。 |
| そして海は、十勝の人々の暮らしからさらに遠ざかった。 |
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